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大森立嗣が鮮烈に描き出す、「生」「希望」「純愛」そして、「狂気」と「滑稽」の狭間

現代日本における派遣労働問題を背景にし、2008年に実際に起こった"秋葉原無差別殺傷事件"の“犯人”をモチーフにした物語。
秋葉原の歩行者天国。梶知之は掲示板サイトに自身のコンプレックスや孤独な叫びを書き込んでいる。梶は向かった先の派遣工場で自分と似た境遇で、更に突然眠る奇病持ちの田中と出会う。 社会から置いていかれる無気力なふたりの青年が偶然出会い、似たもの同士ゆえにそれぞれの心の中にあった“純粋さ”がぶつかり合い、溶けあっていく。そんな彼らの世界に初めての“純愛”と心の奥底に秘められていた“暴力”が次第に姿を現してくる。ふたりを取り巻く世界は厳しい社会環境に追い打ちをかけるように落ちはじめ、更に彼らはすべり落ちていく。社会は彼らを受け入れてはくれないし、許してもくれない。ふたりの行き場はどんどんなくなっていき、追い込まれて行くのだった・・・。

監督・脚本は、『ゲルマニウムの夜』(2005)、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(2010)、『まほろ駅前多田便利軒』(2011)でつねに社会的弱者の立場から日本社会を見つめ続けて来た大森立嗣。

一貫して向けられるそのまなざしは温かくも鋭く、そして切実で神聖な祈りのようでもある。本作ではシリアスな題材の中にユーモラスを織り込み、純粋で、不器用故に滑稽で、また孤独と狂気をも鮮烈に描き出し、新たな一面を余すところなく見せつけた。

「人ごとではない、 これは私たちの問題だ」
 現代の核心をえぐる 衝撃の問題作誕生

大森監督が本作を書こうと思ったのは、“なぜ加藤智大が凶行に及んだのか”ということだった。加藤はネット上の掲示板に大量の書き込みをしている。『時間です』と締められる、その書き込みに衝撃を受けたという。これを読まなかったら、この映画はなかったと言える。彼は実際怪物だったのか?発狂した殺人鬼なのか?彼は同じ空の下にいる私たちの隣人で、同じ空気を吸い、同じ景色を見ていた。彼を別物と規定することは、この事件の核心から目を逸らすのと同じことだ。“なぜ彼は凶行に及んだのか”。いや、“どうしたら彼は凶行に及ばなかったのか”。
「人ごとではない、これは私たちの問題だ」。歴史的凶悪事件の犯人を題材に、彼が自分をとりまく世界で何を見て、何を感じて、何を思ったのか。フィクションでありながら、一人の人間としての内面を図太く真正面から向き合い描ききった、現代の核心をえぐる2013年最大の問題作が誕生した。

大友良英の妙なるジャズビート&個性派キャストのアンサンブル炸裂!

音楽には大友良英が、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国(2010)』以来の参加。全編を包む妙なるジャズビートが個性派俳優のズレたアンサンブルに呼応し、物語を展開していく重要な役割を担う。そして、主人公・梶を演じたのは『SRサイタマノラッパー』シリーズ(入江悠監督)の水澤紳吾。彼の表情、一挙一動がこの映画に強烈なリアリティを与え、新境地を拓いている。梶の初めての親友に個性的な俳優として活躍する宇野祥平が、情けなくも愛おしい表情で、また母性を感じさせる包み込むような温かさで好演している。怪演が光る期待の新人淵上泰史は、スクリーンで人間の狡猾さを見事に演じてみせた。そして、ヒロイン・ユリには初主演作品『浅草堂酔夢譚』でモナコ国際映画祭最優秀主演女優賞を受賞し、今後が期待される田村愛が熱演している。